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コマルハナバチ
春一番最初に現れるマルハナバチです。全身真っ黒で、腹部の先端だけがオレンジ色をしています。他のマルハナバチに比べて全身の毛が長く、ぽってりとしたおなかの部分がとても愛くるしいマルハナバチです。他のマルハナバチが秋まで活動するのと違い、コマルハナバチは6月には新女王バチと雄バチが出てきて、コロニーが解散してしまいます。雄バチは女王バチ、働きバチとはにつかない、全身黄色で腹部の先端がオレンジの、派手な外見をしています。コマルハナバチは日本全国に広く分布していますが、北海道のものは、胸や腹にクリーム色のバンドがはっきり入るため、エゾコマルハナバチとして区別されます。しかし東北地方では、エゾコマルハナバチと普通のコマルハナバチの中間的なカラーリングのものを頻繁に目にします。コロニーを3ヶ月程度で解散させてしまう生活史は、日本のマルハナバチの中でも非常に特徴的です。このような生活を営むため、花がとぎれがちな都会や、花が少ない夏の時期が長い暖かい地域でも生活できます。コマルハナバチは屋久島まで分布し、日本で一番南まで生息しているマルハナバチです。 |
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オオマルハナバチ
頭が大きく、正面から見ると長さと幅がほとんど同じの、まん丸な顔をしたマルハナバチです。全身黒ですが、胸と腹部にクリーム色のバンドがくっきりと入り、さらに腹部の先端はオレンジ色をしています。このオレンジ色は、クロマルハナバチほど鮮やかではなく、ちょっとくすんだ色合いに見えます。雄はクリーム色の部分がより広く、より黄色みが強いのが特徴です。体の大きさの割には口吻長が短いマルハナバチで、主に蜜源の浅い花を利用します。オオマルハナバチは日本のマルハナバチの中でも最もがっちりとした大顎を持っている種類の一つです。これで力まかせに花を食い破って、蜜を盗んでしまうこともあります。オオマルハナバチは日本全国に分布していて、北日本では低地から高山まで最も広く分布していますが、西日本では標高の高いところでしか見られなくなります。低地にはクロマルハナバチがいることと、無関係ではないようです。北海道のものは、クリーム色のバンドが広くくっきりしていて、エゾオオマルハナバチとして区別されています。 |
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クロマルハナバチ
オオマルハナバチと同じ仲間で、体の大きさ、プロポーションなどはとてもよく似ていますが、体全体が黒く、腹部の先端だけが鮮やかなオレンジ色のカラーリングは、コマルハナバチによく似ています。毛足が短いのが特徴で、特に腹部の毛は、刈り込まれたように短くそろって生えています。雄はとても鮮やかな黄色で、胸と腹部の中央に黒いバンドがあり、腹部の先端は同様に鮮やかなオレンジ色をしています。オオマルハナバチと同じ仲間なので、習性もよく似ています。口吻はオオマルハナバチよりやや長めですが、やはり短いため蜜源の浅い花を好んで利用します。また同じように強力な大顎を使って盗蜜を行うこともあります。クロマルハナバチは暖かいところ出身のマルハナバチとされています。そのためか、日本では北海道には分布せず、本州以南の低地を中心に生活しています。しかしやはり西日本では生息する標高が高くなる傾向があります。 |
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トラマルハナバチ
東日本ではコマルハナバチとともに、低地でもっとも目立つマルハナバチの一つです。胸にはオレンジ色の毛が生え、腹部は前半分がオレンジ、先端の方は黒い毛が生えています。雄は毛が長めで、オレンジ色の部分がより広い印象を受けます。日本に広く分布するマルハナバチの中では、最も口吻の長いマルハナバチで、その長さはオオマルハナバチの倍以上に達します。頭部自体も長く、正面から見るとずいぶんと馬面なマルハナバチです。春の女王バチの出現は遅いのですが、働きバチも秋遅くまで観察されます。トラマルハナバチもコマルハナバチのように全国に分布しています。北海道のものは全体に黄色みが強く、毛が長めで、腹部のオレンジ色の部分が広く、エゾトラマルハナバチとして区別されます。口吻の長いトラマルハナバチは、その特徴的な形から花の進化にも大きな影響を与えているようです。ツリフネソウ、キバナアキギリなど、トラマルハナバチだけに依存する「トラマルハナバチ媒花」と呼ぶべき花の存在は、そのような影響の強さを思い起こさせます。 |
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ニセハイイロマルハナバチ/ハイイロマルハナバチ
名前の通り、全体が灰色に見えるマルハナバチです。体の大きさ、プロポーションはミヤママルハナバチとよく似ていますが、毛の色が全く違います。胸はやや黄色みや茶色みを帯びた灰色で、背中側は中央に黒い毛の生えている部分があります。腹部は黒い毛と灰色のけが交互に生えていて、灰色の縞模様に見えます。女王バチ、働きバチ、雄バチのカラーリングはほとんど変わりませんが、女王バチは全体的に色が濃い傾向にあり、雄バチはやや毛が長い印象を受けます。国内では数少ない草原性のマルハナバチで、草むらなどに地上性の巣をつくる性質を持っています。ニセハイイロマルハナバチは、北海道では低地を中心に最も普通に見られるマルハナバチのひとつですが、ハイイロマルハナバチはそれよりは数が少ない種です。この2種の女王バチ、働きバチは外見上とてもよく似ていて、確実な区別点は腹部の一部に生える黒い毛の有無のみですので、写真での判別は困難です。ハイイロマルハナバチの方が女王バチの出現が遅く、全体的に茶色みが強い傾向があります。雄バチは触覚の形状が違うため、容易に区別が出来ます。2種とも本州にも分布していますが、非常に分布が限られています。ニセハイイロマルハナバチは青森と岩手の一部に、ハイイロマルハナバチは長野県を中心とする本州中部(亜種ホンシュウハイイロマルハナバチ)に生息しています。 |
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アカマルハナバチ
日本では北海道のみに分布するマルハナバチで、大きさや体の形はコマルハナバチによく似ています。名前が示す通り、トラマルハナバチよりも濃い鮮やかなオレンジ色が印象的なカラーリングをしています。胸から腹部にかけて毛足の長いオレンジ色の毛で覆われ、腹部にはさらに黒いバンドが入り、腹端は白い毛で覆われます。日本産の他の種には見られないカラーリングで、特にお尻の白い部分に注意すれば、エゾトラマルハナバチやシュレンクマルハナバチと見間違えることもありません。コマルハナバチと同様に、早春から活動を始め、夏前にはコロニーを解散してしまう、短期間しか見られないマルハナバチです。北海道では低地から山地にかけて広く見られますが、数はあまり多くなく、渡島半島南部には見られません。 |
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エゾナガマルハナバチ
北海道にのみ分布するマルハナバチで、北海道では最も口吻の長い種類です。体の大きさはトラマルハナバチと同じくらいで、全体的に黄色で胸と腹部に黒いバンドがあり、腹端は毛足の長い白い毛で覆われています。トラマルハナバチよりもさらに馬面なマルハナバチで、正面や横からみるとその顔の長さがよくわかります。山地性の性質が強い種類ですが、道北や道東では平地でも見られます。ツリフネソウやトリカブト類など、トラマルハナバチと同じような花で観察されることの多い種類です。 |
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セイヨウオオマルハナバチ
名前の通りヨーロッパから来たマルハナバチで、ハウストマトなどの受粉用に利用されていた種類です。1996年に北海道で野生化が確認されて以降、徐々に分布が拡大し、現在ではほぼ全道で見られるようになってしまいました。鮮やかな黄色と黒の縞模様を胸と腹部にもち、腹端は白い毛で覆われるカラーリングは、日本産の他の種には見られないものです。オオマルハナバチ、クロマルハナバチと同じ仲間に属し、口吻が短い種類で、しばしば盗蜜を行ないます。道内では市街地や農耕地などにみられ、森林の多い環境にはあまり生息していません。在来のマルハナバチ類や、マルハナバチに花粉を運んでもらっている植物の生存や繁殖に悪影響を及ぼすとして、特定外来生物として規制の対象になっています。国内のマルハナバチ類と比べて攻撃性が強い傾向があるため、観察の際は注意が必要です。 |